舞風─君をさがして─

「あの──えっと……その」

事情を知らない者からしたら、『授業をさぼってジュースを飲んでいるやつ』
と思われても仕方ない状況であることは確かだ。

咄嗟に飲んでいたジュースを後ろに隠すが、これももはや無駄な抵抗なのかもしれない。

「言い訳が見つからないってところか?それもそうだろうな。お前、学年と名前は?」

「い……一年A組、雪村千鶴……です」

この人も先生だよね?
視線が怖いっ!

「雪村千鶴……そんな怯えた顔しなくても、俺は何もしねぇよ」

顔が自然と紅くなっていくのを感じていた。

「せっ、先生の名前、教えて頂けませんか?お願いします!!」

頭下げて、顔を見られないようにごまかすことくらいしか思いつかなかった。

「土方歳三……この学園の教頭兼国語の教師(現代文、古文)もやってる。因みに一年A組は残念ながら俺が担当だ」

そうだったんだ──まだ国語の授業なかったから分からなかったよ。

「顔上げろよ、千鶴」

下の名前で呼ばれたら、さっきよりますますドキドキしてきたよぅぅ。

「……土方先生」

「今日のことは大目に見てやる。その代わり俺の授業の時は容赦しねぇからな」

「はいっ、ありがとうございます」

その優しい瞳に吸い込まれそうで……

心臓が高鳴る。

これは──下の名前で呼ばれたせいだけなの?