「………痛い?」



ちいさく呟かれた言葉が聞こえたのか。
地に横たったまま動こうとしない男の身体が僅かに揺れた。

その顔色は闇夜でさえ分かる程に白く、明らかに生気を失いつつある。



「……ねぇ、痛い?」



まるで睦言のようにあまく囁かれる言葉とは裏腹に、女の表情は冷めていた。
けれど、人を魅了するだけの微笑みが其処に在った。

清楚さを思わせるレースに縁取られた白いスカート。それが汚れることも気に留めず、女が男の傍らに添う。


男の視線が女を映すと、細い指先が男の荒く上下する胸の上へと這わされて。



「でもね、私はもっと痛かった」



───此処が……。



脈打つ心臓の上、歪んだ笑みを浮かべる女は一滴の涙を零した。