昔、彼女が町の長屋で暮らしていた頃とは違って、
向かいの亜鳥は落ち着いた色合いの着物に身を包んで、上品に着飾った格好をしている。

「どういう意味だね?」

今日は城代家老の奥方として会いに来てくれたこの年上の女性は、

相変わらず綺麗で、
そして相変わらず男のような喋り方だった。


私のほうはと言えば──

さすがに時々は女物の着物も着るようになったのだけれど、

お城に戻ってから、
なぜか円士郎に普段は男の格好でいるようにと命じられて──

やっぱり相変わらず小袖に袴だった。


例によって彼女の気味の悪い絵を広げられてはかなわないので、

今はこうして将棋を指していて──


「側室になった気がしないって言うか……結城家にいた時と何も変わらない気がするって言うか……」


私は駒を進めながら、ここ最近ずっと感じていたことをおずおずと口にした。


「もちろん、お城の暮らしは結城家と全然違うけど……
でも、側室にしてもらったのに、エン……殿との関係はあんまり変わってないことに気づいて──

これでいいのかなあって思って……」