食うな食うな、痛ェなら無理して食うな。
俺は鼻を鳴らして──
「しっかし、そこの御家老様はともかくよ、
おつるぎ様を台所に立たせるなんて、藤岡様や菊田様は何も仰らなかったんですか?」
隼人があきれたように言った。
「ああ、それは──前例のあることだったのでな」
歯痛の城代家老は事も無げに答えて、
「前例!?」
耳を疑った様子で隼人が聞き返した。
「なに!? そうなのか」
それは俺も初耳の話だった。
「ええ」
青文は覆面の下から、何とも言えないふくみ笑いをもらした。
「先君の時にも、初姫様が……ね」
なにやら苦笑しているような声だった。
「一時期ご趣味で料理をなさっていました。
先君や──我々家臣にも、このような席が設けられたことが何度か。
藤岡殿や菊田様、私もご厚意を受けたことがありまして」
へえ、と思う。
先々代の娘で、先君の正妻の妹に当たる初姫は──留玖の話によると、義兄である先君の左馬允と恋仲だったそうだが。
彼女も、留玖と同じようなことを考えたのだろうか。
などと、どこか俺と留玖に似た境遇の従姉について思いを巡らせていると、
「お待たせしました」
愛しい声が耳に飛び込んできて、留玖が膳を運んで現れた。
俺は鼻を鳴らして──
「しっかし、そこの御家老様はともかくよ、
おつるぎ様を台所に立たせるなんて、藤岡様や菊田様は何も仰らなかったんですか?」
隼人があきれたように言った。
「ああ、それは──前例のあることだったのでな」
歯痛の城代家老は事も無げに答えて、
「前例!?」
耳を疑った様子で隼人が聞き返した。
「なに!? そうなのか」
それは俺も初耳の話だった。
「ええ」
青文は覆面の下から、何とも言えないふくみ笑いをもらした。
「先君の時にも、初姫様が……ね」
なにやら苦笑しているような声だった。
「一時期ご趣味で料理をなさっていました。
先君や──我々家臣にも、このような席が設けられたことが何度か。
藤岡殿や菊田様、私もご厚意を受けたことがありまして」
へえ、と思う。
先々代の娘で、先君の正妻の妹に当たる初姫は──留玖の話によると、義兄である先君の左馬允と恋仲だったそうだが。
彼女も、留玖と同じようなことを考えたのだろうか。
などと、どこか俺と留玖に似た境遇の従姉について思いを巡らせていると、
「お待たせしました」
愛しい声が耳に飛び込んできて、留玖が膳を運んで現れた。



