間愛のつめかた

「へェ、殿は女を溺れさせるほうかと思ってたら、女に溺れるクチだったかい!

ああ、考えてみれば確かに昔からおつるぎ様を溺愛してたねェ。

こりゃァ彼女が傾城ってのも、冗談じゃないかもしれねェな」


「……うるせー」

俺はそっぽを向いたまま言って、それから口元がゆるむのを感じた。

「まァ、女に心底惚れ抜くのも、悪くねェ感覚だな」

「なるほど。昔以上に重症のご様子だ」と、青文は含み笑いをしながら言って、

「しかし女のことばかり考えて勉学にも身が入らねェようじゃ、本当に国が傾くぜ」

俺の前に積み上がった書物に覆面を向けて、城代家老は真面目な口調になった。

「誰が身が入ってねェって?」

俺は鼻を鳴らした。

「ここにある書物なら、もう大体目を通し終わったぜ」

「ほう、ではこれを」

澄ました口調で言って、青文は手にしていた書物をどんと積み上げた。

うげえ、まだ読むのかよ……!?

俺はげんなりしながら、先刻まで読んでいた書物をぱらぱらとめくった。


「なあ、それよりここに書かれてる記録によるとよ、数年置きにたびたび凶作が起きてるよな?

国内でこれだけ繰り返し飢饉が起きてるのに、過去の連中は何にも有効な対策を講じて来なかったのか?」

「冷夏の天候は御せませんからな」

「そりゃそうだけど──干ばつが原因の時もあるだろ。治水に問題はねェのか?」


覆面頭巾は声を立てて笑った。


「良い質問ですな。
ですから──今お持ちした書物は、国の治水についてまとめたものです」


相変わらず……どこまで人の心が読めるんだよ、こいつは。