間愛のつめかた

「殿が!?」

亜鳥が碁石を取り落として目を剥いた。

「あの殿は、今度は仙台大納言(*)の真似事でもしてるのか!?」

「あ。いえいえ、そういうことではなくて」

私はぱたぱたと手を振った。

「武者修行の旅をしている時、道中何度か野宿したことがあって」

「野宿!?」

「その時に、ご飯は殿が作ってくれたんです。
と言っても、野草を使ったおかゆとかですけど」

「野草……」

亜鳥は絶句して、目を碁石のように白黒させた。

「それは……どんな旅をしていたのか、いつか詳しく聞きたいものだな」

生まれながらの武家の令嬢は、信じられないという表情で首を振った。


町で絵師として長屋暮らしをしていた亜鳥ですら、こんな反応をするんだなあ……。


やっぱり普通、上流階級の人は武者修行の旅なんてしないよね。

うーん、エンも生まれながらの御曹司のはずなんだけれど……


でも、父上も若い頃は武者修行の旅に出てたって言ってたし、

ひょっとすると、結城家が代々変わっているのかもしれない。



(*仙台大納言:伊達政宗のこと。料理が趣味だったことでも有名な異色の大名)