「遠慮してる……ってことなのかな……?」
今もこのお城のどこかにいる大好きな人の顔を思い浮かべながら、
私は小さく呟いて、盤面の駒を動かして──
「あ、これで王手ですね」
将棋の盤面を睨んでいた亜鳥が、がっくりとうなだれた。
「おつるぎ様、ちょっと強すぎないか?
これで私の五戦五敗だぞ……!」
えへへ、と私は照れて笑った。
「エン……殿も、いつもそう言ってる」
円士郎とは結城家にいた時からよく将棋を指したけれど、大抵は私の圧勝だった。
「殿にいつも勝っているのかね!?」
亜鳥が目を丸くした。
「青文殿は、殿に将棋で勝ったことは一度もないと言っていたぞ?
殿も将棋は相当強いだろう」
「うーん、弱くはないだろうけど……」
私は、へえ、と思った。
「青文様も、エ……殿には勝てないんだ」
「囲碁は逆に、青文殿のほうが強いようだがね」
あ、それはわかる気がする。
あの金髪緑眼の頭脳明晰な御家老は、何となく将棋よりも碁のほうが得意そう。



