化学室のノート【短編】




「あの曲…私のことだと、

思ってもいい?」




涙が溢れて止まらない。




彼の制服の端をつかんで
そっとわたしは囁く。




すると彼は、あのときみたいに微笑んで言った。




「……他に、だれがいるんだよ」




そして彼に頭を撫でられると
また涙が込み上げてくる。




ぐっと目をつむって
溢れだしそうなものを堪えると、彼は声を上げて軽く笑う。




「……なぁ、この返事、
ぐっときたぜ?」




ちょっとだけ
格好つけた仕草で彼は言って、
私は少し、頬をそめる。




「ばか………」




つぶやく声は
彼には聞こえてないらしかった。