化学室のノート【短編】



私の驚いた顔に
彼も愕然として呟きをもらす。




「………うそだろ」




その声が私の疑問を嫌でも
確信へと導いてゆく。




うそ。
この人が、まさか。




「あなたが……?」




薄暗い化学室のなか。




私の声も静かに部屋に
反響してゆく。




閉めきったカーテンが
私たちの間の空気を密にする。




「…とりあえず、ドア閉めとけ。
ここにいんのバレたら追い出されるから」




「あ……うん。」




無理矢理
彼は私から視線を剥がして
私も俯いてドアを閉める。



ピシャッというドアの音が
二人きりの空間を作り出したようで、逆に私は緊張した。