午前2時―


バサ―


静かな部屋に響いた音。


黒い翼を持つ一人の男が壁を
通り抜けサキのいる病室に
入ってきた。


彼は
ヨクにひざまづいていた男だ。


サキは静かに寝ている。


男は、静かにサキのベッドへと近づいていく。


「この子か…」


男はサキを見つめて目をつむった。


「悪く思わないで下さいね…」


低い声で呟き、男は手をサキの胸においた。


「……っ…はぁっ…」


サキは顔を歪ませ、呼吸が粗くなっていく。


サキの手足がピクピク動く。


「…できない…」


男は、手を離した。


サキの顔はまた穏やか
になっていく。


「…こんな…。禁忌を犯すなんてこと…。」


男は、しゃがみ込み頭を抱えて震えている。


「…ヨクさんの…命令でも…っ…できないっ…」