「千尋?」


無言のまま千尋は俯いていて、私が呼び掛けてもこっちを向いてくれない。


「‥どうしたの?」


返事はないまま、私はとりあえずその場に腰を下ろす。


暑くなってきたから、なるべく日陰にいると千尋が私の手をそっと取った。


「‥八尋が告白したってね」


「あ、うん‥どうしていいか分からなくて‥だから保健室に逃げちゃったんだ」


「どうしたら良い、って‥もしかして告白受けるつもり?!」


いきなり声を上げた千尋にびっくりすると、私は頭を横に振った。


「今までの友達を無くすのは、辛い事なんだよ?‥千尋は私の友達であって八尋の兄弟」


「‥友達なんて思ってない、そう言ったら?」


冷めきった目で私を見ると、ニヤリと不気味な笑みを向けた。


「もう、疲れるからこの際言うけど‥いつも沙由を“友達”じゃなくて“好きな人”として見てたんだよ?」


ぞっとした、だってその時の顔は目が虚げで私に微笑んでいる表情が忌ま忌ましいものだったから。


「何で、二人‥どうして」


「好きになるのに、理由なんていらないでしょう?‥しいて言うなら、二人共好きになった理由は同じだけどね‥?」


「‥分からないよ、私どうしたら良いか‥今は、まだっ」


双子二人に告白されるなんて、私は思わずその場から逃げ出した。



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