「沙由、おっはよー!仲良し双子もおはよー」


「おはよう、何か今日はやたらと元気が良いんだね?」


「そうかなー?いつもこんな感じじゃない?」


あやめはニッコリ笑いながら、私の肩に腕を回して愉快そうに歩いている。


「あ、今日‥俺とあやめ日直じゃない?すっかり忘れてた」


「えっ?!それ早く言ってよーっマジやばいじゃん!ほら!千尋、走るよっ!」


あやめが千尋の手を掴むと、二人は走りながら学校へと行ってしまった。


「‥」


「‥」


私、ぶっちゃけて言うとある事件があってから八尋と二人で話しにくくなったんだよね。


まあ、それがあやめが八尋を好きだって言う“噂”だから対して気にしてないんだけど。


「何だよ‥二人になった途端喋んねぇとか」


「へ?あ、いや‥ごめんね‥」


「お前、好きな奴居るか?」


「‥突然何よ!」


「良いから、居るか居ないかだけだろ?答えろよ」


ワイシャツの下に黒いタンクトップを着て、着崩している八尋をちらっと見上げる。


「よく分からないけど、気になる人は居る‥よ?」


「ふーん、やっぱり好きな奴くらい居るもんだよなぁ‥あームカつくな」


「え?今何て言った?」


「いやー、何でもねぇよ」


フッと笑い私の頭に手を乗せると、八尋は優しく撫でる。


ふーん、の後が聞き取れなかった私は少しもやもやしたままだった。



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