「先生、何処かに出かけるんですか?」


「沙由ちゃん、お帰り‥心配だったから迎えに行こうとしてた」


「大丈夫ですよ、真美さんと近くの喫茶店で会うって言ったじゃないですか」


くすくすと笑い先生の手を握ると、少し嬉しそうに微笑んだ。


昨日の先生はホントに嘘みたいに思えたけど、束縛が酷いし‥別に付き合ってる訳じゃないのに。


昨日、お嫁さんにすると言った先生に確かに一瞬ときめいたけど‥先生を好きか‥そうじゃないか‥今、すぐにはっきりと答えられそうになかった。


ガチャリとドアを開けると、靴を脱いで中に入る。


「あ、先生ケーキ食べますか?さっき夕飯食べたし食後のデザートに」


「何ケーキ?」


「ショートケーキとフルーツタルトを買ってきました、どっちにしますか?」


「じゃあ‥ショートケーキ」


あれ、なんか先生ふて腐れてる様な感じがする。


「紅茶入れますか?」


「‥うん」


「じゃあお湯沸かしますね」


先にケーキとフォークだけ先生に持って行き、私も先生の前に座った。


「‥私何かしましたか?」


「先生じゃなくて秋‥でしょ?さっきからずっと先生って言ってるよ」


「子供じゃないんだから‥」


「俺にとっては大事な事なんだよ?何でそんな事言うの‥」


悲しそうに下げた眉、ふて腐れてる表情‥始めて見る先生の顔だな‥。


だけど少しずつ、私はどこかで気持ちが冷めつつあるのかもしれない。


だってこんなに監視された生活、堪えられないから。



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