ある聖夜の物語《短》


「ノエならそう言うと思ったよ。酒なら腐るほどあるから安心しろ」

部屋の隅においてある冷蔵庫から、ビールを取り出したタキは小さく笑う。

そのキンキンに冷えた缶ビールを私に手渡すと、少し間をとって私の隣に座った。


酒あるところに、ノエあり。

アルコールには滅法弱いくせにお酒が大好きな私は、いつの間にかそんな風に言われるようになっていた。

センスも語呂も悪いな、と思いつつも止めてと言えないのはそれが事実だからであって。

「さすがはタキ。じゃあ早く始めようよ。クリスマスパーティー」

今だって実際、早くこのビールを飲みたくて体はうずうずしている。

隣に座るタキの服の袖を数回引っ張ると、はいはい、と適当な声を返してきた。

「じゃあ、クリスマスおめでとう」

「おめでとー」

お互いに缶のプルトップを引いたあと。

そんな意味のわからない言葉と同時にコンッ、と缶が軽い音を鳴らした。