タキの隣に立つと、左手に持っていたジャケットを当然のように私から奪って、ハンガーにかけてくれる。

ありがとう、と小さく笑いかけながらタキに続いて十畳ほどの部屋に入ると。

そこには誰もいなかった。

「あれ? 皆は?」

部屋にかかっている時計は七時を少し過ぎた頃を指していて、私がほんの少しだけ集合時間に遅れたことを教えてくれている。

それなのに誰もいないなんて。

不思議に思いながらタキを見ると、スウェット地のズボンのポケットから携帯を取り出して、その画面を私に見せてきた。


「……恋人ゲットしました」

句点のかわりに語尾にハートの絵文字が躍るそのメールの送り主は、このパーティーを企画したクラスメイトで。

視線をメールからタキに移すと苦々しい顔で、携帯を見ていた。