「俺、くっつくほうに五百円!」
「私も!」
「んー、私も付き合うほうかな」

大きなテーブルは食べ物とアルコールの入ったグラスで占領されており、その真ん中には無理矢理広げたらしい二枚の布。

その片方の布にコインが投げられるたびに、チャリンと音がする。


「俺、付き合わないほうに三千円」

そして一円も投げられていないもう片方の布に、眼鏡をかけた頭が良さそうな男の子が千円札を三枚乗せたとき。

その場にいた全員が目を見開いた。


「アンタ本気!?」

「ていうか、お前がアイツらくっつけようって言い出したんだろ?」

「そうだよ。だから私達、あんなに虚しい嘘までついたのに」

虚しい嘘、という言葉に全員が少ししょんぼりとした表情になり、次の瞬間にはそうだそうだと声を上げる。

口々に言葉を発する男女に、眼鏡をかけた彼は少し困った顔をした。


「まあね。だけど今日付き合うとは思ってないよ。ノエ、かなり鈍感だから」

それでも彼は自分の意見を曲げる気はないらしく、サラッとそう言い切った。

どうやら彼には彼なりに理由があったらしい。そしてその理由はここにいる全員を納得させたらしく、皆大きく頷いていた。