狭い玄関に足を踏み入れながら同時に木のドアを閉めると、冷えた体がほんの少し温まったような気がした。

手に持っていたカバンを廊下に投げ捨てて、ニーハイブーツのファスナーを下げる。

同じくニーハイ丈のソックスに包まれた足を廊下に下ろし、ニーハイブーツが型崩れしないよう壁に立てかけていると後ろから誰かの気配がした。

「おお。まあ入れよ」

振り返ると部屋と廊下の境目あたりに、この離れの主である物ぐさ男……タキが右手を上げて立っていた。


タキがお出迎えなんて珍しい。

そう思いながら同じように右手を上げ、やっと言うことを聞いてくれたニーハイブーツに笑みを落としカバンを掴んだあと、足をタキへと進める。

たった三歩でたどり着くその場所に行くまでに、真っ白のファージャケットを脱ぐ。

ジャケットの中に着ている黒のワンピースは、皆に絶賛された私のお気に入りだ。