ある聖夜の物語《短》


「あーっ!雪だ!」

それは紛れも無く雪で。

この地域ではあまり降らない雪をクリスマスに見れたことに感動した私は、もっと近くで見たくなり勢いよく立ち上がる。

だけど、私は大事なことをすっかり忘れていた。自分が酔っ払っているということを。

「おいっ! このバカ、急に……」

そんな私をタキが怒鳴り付けたのと、ガクッと足から力が抜けたのはほぼ同時だった。


バランスを崩したせいで前のめりに倒れていく体。視界に映るものは白いカーペット。

痛みを覚悟して目をぎゅっとつむり、その衝撃に耐えようと歯を食いしばった。

だけどいつまで待ってもその衝撃はこなくて、恐る恐る目を開けると眼前にはクロスのネックレスが揺れている。

私の体の下にあるものはカーペットではなく、綺麗に筋肉のついた体。

まさか……と思いつつ、視線を上に向けていくと、そのまさかで。

そこには私の下敷きになって、不機嫌そうな顔をしたタキがいた。