「……あのね、平井君。」
「うん?」
「好きな人に、好きな人がいたら、
その二人は恋人になり得ないと思わない?」
そう言った瞬間に、平井君が私を見たのは分かったけれど、
私は膝に顎をのせて、薄汚れた白い壁を見ていた。
「…思う。」
“話の筋が見えない。”
そんな感じでためらいがちに、平井君は答えてくれた。
「…うん。だよね。
だからね…私は神谷と、
バイバイすることにした。」
出来るだけ、“そんなこと、どおってことないわ”って感じを出したつもり。
今、鼻の奥がツーンとしていることは、上手く隠せているだろうか…?

