「瀬合さ…なんか、あった?」
「……なんかって?」
あったよ。
ありまくりだよ。
でも、言うわけにもいかないし
とぼける演技が上手くできていないのは承知の上で、思い切りとぼけた。
「元気ないし、ボーッとしてる。
俺でよかったら聞くよ?」
そう言うと平井君は、私が持っている氷が入った袋をヒョイと取り上げて
キレイなヤツだから大丈夫
と、タオルでそれを包んでくれた。
「直で冷やすと冷たすぎるでしょ?」
「……ありがとう。」
ニコリと微笑んだ平井君に
とても優しい平井君に
弱い私は口を開く。
誰かに言えば楽になるかと
弱い私は口を開く。
そんなことは
あり得ないのに。

