「私にはこうやって、お兄ちゃんがいてくれたけど、その子には…?
…いないじゃん。誰も。
マキハラさん働くんでしょ?」
私の問いかけにマキハラさんはゆっくりと頷いた。
「…父と母も、腰が悪いから、子供を任せるのは…難しいんです。」
「…萌……。」
父は“何も知らなかった”って顔。
妊娠させておいて、身勝手すぎる。
「……親父、マキハラさんの家に挨拶とかは…?」
兄の方がよっぽど常識がある。
「それは、私が“電話ですませて”って言ったの…。腰が悪い事を隠しておきたくて…。」
「…んだよ、それ…。」
兄は困惑していて、父は落ち着かないみたい。
マキハラさんは今にも泣き出しそうだし…。
……なんなの…。
みんなみんな…………
「………めんどくさいなぁ。」

