「…黙っていてすまない。
お前達の事を考えると、なかなか言い出せなかった。」
父がマキハラさんのお腹を見つめて言った。
「…俺達の事を考えてんなら、もっと早くに言うべきだったんじゃない?」
兄がため息混じりに言うと
「ごめんね。」
何故かマキハラさんが謝った。
「…私……決めてたの…。」
マキハラさんが声を詰まらせながら話し出した。
「2人に…受け入れてもらえなかったら、この子は1人で育てよう…って…。」
「………え?」
「…実家に帰ろうかって……。」
「そんなの、聞いてないぞ?」
父が驚いた顔をした。
「…私、俊彦さんには迷惑かけたくないもの。」
「迷惑なんかじゃない…!」
いい年こいて、何してんだろ…。
やっぱりウチは“昼ドラ”だ…。
「……ねぇ、親がいないとどれだけ寂しいか知ってる?」
言い合いを始めたマキハラさんと父の声を遮った。
「………え?」
「私のお母さんは、私が5歳の時から入退院を繰り返してて、一緒にいられる時間ってすごい短かったの…。」
マキハラさんはお腹を撫でながら目を泳がせていた。
「…で、私が小6になってすぐ入院して、中1になってすぐ……死んだ。」
兄が私の手を握って
「もういい」とでも言いたげに見つめてきた。

