「なっ――「シ―――っ」」
アタシは口を手で覆われ、シーと言う合図を受けた。

「静かにして?」

綺麗な口が動く。

うんと頷くと口を解放してくれて、アタシの手を握って走り出した。


ななな、なぜぇ――?!!

そんな疑問もあったけど、アタシはただ引きづられていた。


校内を飛びだすと、やっと止まってくれた。
彼は息を切らす事もなく、振り向いて微笑んだ。

「ごめんね? いきなり連れ出して」
「あ、大丈夫、です…」
「そっか。あ…うんと、名前何?」

なぜ名前?
聞いてどうすんだ…?

そう思ったけど、アタシは素直に吐いた。

「…高崎咲月」
「分かった。咲月ね。あ、俺の名前…「伊集院涼、さんですよ、ね? 聞きました」」

すると、彼はフッと笑って、「呼び捨てでいいよ」と言ってくれた。