受け取りは、企業らしい神経質な凝ったやり方だった。

 受け取るだけで1時間も街中を歩き回り、20の店に立ち寄り、7つの単語と、4回のDNAチェック、そしてこの都市のあらゆる交通機関を駆使したチェイスの後、ようやく受け取りに成功した頃には、すでに都市には夕闇が迫っていた。

〈あの連中は、絶対遊びでやっていたに違いない〉

 と、マックは今日出会った依頼人の部下どもの顔を思い出して思った。

 どいつもこいつも凝り性な格好をしやがって、マックは、吹き出すのを堪えるのに苦労した。

 まあ、もうすでに見抜かれているのを承知で、わざと相手をこけにするつもりでやったのだろうけれど。

 その結果は、今マックの後方20メートル辺りのところにいた。

 ミントの部下からの情報では、やはり狙っているのはEIGの連中だと言うことだった。

 とにかく、おびき出すだけおびき出して、後の始末はマックに任されていた。

〈割に合わねぇ仕事だ。企業の連中ってのはなんでこんなにしつこいんだ〉

 ふと、ジャッカルの動力ジェネレーターの部品にかかった2万クレジットのことが浮かんできた。

 そうだ、あれからけちがつき始めたんだ。あれさえなけりゃ、マニプティのステーキだってたらふく食えたし、スレンダーな火星美人を相手に洒落た会話に酔っていたかもしれない。

 いや、きっとそうだ。

 そう思うと無性に腹が立ってきた。

 仕事用のブルーのメタルスーツを着込み、右には無骨な大型ブラスターKV・320を、左にはS・PACを腰から提げて、繁華街に向かう人の流れに歯向かうようにオリンポスシティのメインストリートを中心から外へと歩いているとは、段々自分が惨めになってくる。

 S・PACの中に納められている荷物、薬品らしいサンプルの入ったカプセルとそのデータが記録されているチップが妙に重く感じられる。

〈そろそろ潮時か〉

 マックは、ひょいと右へ曲がった。