「たっだいまぁーっ☆」


家に着くと、
すんげぇいい匂いがした。


「おかえり~奏楽!
今日は焼肉よぉ~っ
イッエーィッ!」


母さんは、
右手で肉を焼きながら、
左手でVサインをした。


「焼肉~ッ♪
うまーい♪
焼肉~♪」


この意味の分からない歌を歌ってんのは、
俺の弟、翡翠 天響 (ヒスイ ティナ)。
今、小3。


「焼肉~
ママ~焼肉高級~?
高級なぁのー?」


んで、こっちは妹の翡翠 七音(ヒスイ ドレミ)。
まだ保育園に通ってる。


母さんはわりと俺を若くで産んだみたいだから、
兄弟3人とも年が離れてる。
ちなみに、父さんは会社で忙しいから、夜遅くに帰ってくる。


「なぁなぁ!
聞いてくれよ、母さんっ!」


俺は料理中の母さんに向かって言った。


「何?
そんなうれしそうな顔して~」


やっぱ親には顔見られただけで気持ち読まれるんだな。
顔に出してるつもりねぇのに。


「今日さ、部活にボーカルしてくれる子が入って来たんだよ!」


「あら~良かったじゃない。
男の子?
女の子?」


母さんは俺に尋ねた。


「女~
美歌ってやつなんだけどさーっ!
むちゃくちゃ歌うまいんだよ、マジで!」


「…ふ~ん。
そう~へーっ♪」


母さんは何故か楽しそうだ。
なんでだ?!


「な、なんだよ?」


「ふふふ…。
まさか、奏楽がねぇ~
ふふふふ♪」


な、なんなんだ?!

俺なんも変な事いってねぇよな?!



「なんなんだって聞いてんだろ?!」


「べっつにー。」