閉じ込められた赤ん坊は泣き続けた。


しかし誰も近づくことはできなかった。




そのまま赤ん坊に死が訪れるのを待った。


しかし一週間経っても赤ん坊の泣き声が聞こえ続けた。




一人の男が、赤ん坊を閉じ込めた扉に近づいた。

右手には赤ん坊にとどめを刺すために用意したナイフが強く握られていた。

扉に触れようとしたとき、厳重に掛けたはずの扉が勢いよく開き、密室のはずの部屋から吹いてきた羽根を乗せた強風が、瞬く間にその男の全身を羽根で覆った。



“羽根”というよりも、それは白い花びら状の“ナニカ”。




男はそのまま倒れ込むと背中から急速に羽根を生やし、その痛みに耐えきれず強く握られたナイフを自らに突き立て、白の中に赤の飛沫を降らせた。




赤ん坊の泣き声だけが、ずっと響いていた。