ナキひとりで
世界中のほとんどの人を殺した。
ナキの抱えているものすべて分け合って、共に支え合っていくことができるのだろうか。
「なんの話…してるの…?」
心臓が跳ねた。
これはきっと、人に聞かれていい話ではない。
見開いた緑の目の先には、恐怖に顔を歪めた姉がいた。
「コウスケに、なんの薬を打ったの…?」
家で休んだ後、僕らが心配でここまでまた来てくれたのだろう。
聞かれたのが姉ならば大丈夫
そう思い、ホッと胸をなで下ろしたが、ナキの顔はずっと動揺したままだ。
「ナキ?」
途端に、ナキの羽織っていたダッフルコートが空を舞った。
銀色の長い髪を揺らし、
その背中には
誰よりも立派な、大きな羽根。
“天使”という言葉がぴったりで、
僕はずっと、この姿を見たかった。
ナキはそのまま、羽根をはためかせ宙に浮き、その場から逃げるように空を飛び姿を消した。


