“あの人”というのが多少気になったが、このままでは話がなかなか進まない。

屈んでナキと目線を合わせる。

緑の目には、迷いが残っていた。




「俺はナキを嫌わない。ナキが好きだから、ナキのことを知りたいだけなんだ。」




それでもナキはまだ躊躇いながら口ごもる。


本来なら、「無理に言わなくて良い、言いたいときに教えてほしい」と逃げ道を作ってあげるんだろうけど、残念ながら今の僕にはそんな余裕はなかった。



ナキは深呼吸を繰り返した。

そのたびに僕は、ナキがいつ喋り出すのか緊張していた。



ナキの口からどんな真実が飛び出すのか、

“記憶喪失”という想定を覆された今じゃもう、予想もできない。




ようやくナキが口を開いた。


「…“驚かないで”っていうのは、きっと無理だから……嫌わないで、くれる?」


「うん」


「ユウヤ、好き」


「俺も、ナキが好き」