心臓が早く脈を打つ


息が荒くなり、マスクの下の口元が蒸れて気持ち悪い。





“ナキが一番美しい瞬間を見たい”という感情が恋というなら


きっと僕は、初めてナキに会った時から恋をしていた。


たとえそれが朽ちる瞬間だったとしても。




コウスケのように、“一緒に死にたい”とは思わない。


この世に抗ってでも一緒に生きたい、とも思わない。



「ナキの病のためにも研究をする」と言った姉には悪いが、やっぱり僕はナキの死ぬ瞬間を見たかった。