「結局さ、あんまいいとこなかったよねぇ・・・」

「そう?軽音部とかよくなかった?」

「男子の先輩が嫌だな。かわいい子に片っ端から声かけてて気持ち悪いよ」

「麻衣よく見てるね」

「ゆーちゃんはやっぱり剣道部?あれから見学してないみたいだけど」

「あー・・・あの日結局西園寺和歌も来なかったし・・・中坂美姫はあれだし・・・」

「あれって何、美姫いい人だよ!」

仲良くなってるし。

「あー、ごめん。言葉のあやだって」

「で、今日見学最終日じゃん?剣道、行こうよ」

「え」

「あの先輩見たいし、美姫も見たい」



この会話が5分前。


そして今。


「あっ、ゆーちゃんさんだ!えへ、やっと来てくれたんですね!」


ああ・・・この子もいたんだっけか・・・


『こんにちは』

その隣には笑顔で携帯を向ける涼香先輩。

それを見て麻衣は一瞬ぎょっとしたが、何か察したようで黙った。


「あれ、麻衣じゃん?」

「おお美姫、今日は剣道着着てる!」

麻衣の言った通り、今日の中坂美姫は胴着を着ている。

「練習参加してんの。勘戻さなきゃね」

そういって髪を結う姿はやっぱりあの中坂美姫だった。