名も聞かず私はひたすら彼の世話に励む。 身体は起こせるようになったが…まだ自力で立ち上がることは出来なかった。 右手を怪我して食べることの出来ない彼に私は食事の世話もした。 「身体が暖まる…」 彼は里芋だけの汁を美味そうに食べる。 「今年は不作で思うように米の収穫出来なかったので…このような粗食で申し 訳ありません」 「こうして…部屋を貸して頂き…食べることが出来る…それだけでも忝い」 彼はそう言って私に微笑んだ。