「…ですからして――、あなた方は、常に他の生徒の手本となるのです。分かりましたね?」
『あなた方は手本となるのです』。
これ、何回言っただろう。
少なくとも五回や十回は余裕で超してると思う。
「では、今日はここまでにしましょう。次回から本格的に授業を開始しますよ」
ぱたんっとなにか分厚い本を閉じながら、「解散」と言い放った。
それを合図に、弾かれたようにすっとんでくる……女子、女子、女子。
隣に座るあたしなんて、いとも簡単に押し出されてしまった。
「星野くんっっっ❤❤予習したいんだけど!」
……自分でしなよ。
「ここよくわかんないんだけど~❤」
仮にも音楽学校に入る人が、楽譜読めないの!?
「楓様ーーっっ❤」
か、かえ……楓様…!?
なぜか心の中で突っかかってしまっていたあたしは、最後に聞こえたちょっと可笑しげな一言に思わず振り返った。
「なっ……」
なんつー勢い…。
群がる女の子達が避けざるを得ないほど。
五人くらいの集団だ。
「楓様。ようやくお会いできましたわね!」
話しかけられている張本人は、目にも入っていない様子で立ち上がる。
きっと……集団がいなくなって助かった、位にしか思ってないんだろう。

