――楓サイド――


「で、出るわよ…」


震えながらそう言って、弓を握りしめて歩み出した偽真裕。

本人前にしてよくやるよ…。


―ざわっ…


「ん…?」


途端、会場内がざわめきだした。

どうも…“藤峰真裕”が現れたからではなさそうだ。


『……ればいいのよ!』


「え…!?」


聞こえてきた音声に一気に青ざめるうざい女。

それもそのはず、この声はその当人のものだ。


『でも…うまくいくかしら?』


『絶対に大丈夫ですわ。本物なんてどこにいるやも知れない身…。それにあんな七光りの餓鬼、今さら出てきたってどうてことないわよ』


『それもそうね…。じゃ、受けるわその話。“藤峰真裕役”、やろうじゃないの』



「これ…は…」


今回の取引の映像が、舞台に流れているらしい。

一体誰がこんなもん…。



「ちょっと…どうなってるの!?」

「藤峰真裕は偽物だったの!?」

「俺達を騙したのかよ!」

「出てきなさいよーっ!!」