「な……なんの話をしているの?」
しらばっくれたって、目が泳いでる。
あたしに嘘つこうなんていい度胸じゃん。
いいよ。やったげる。
「あんたが切り裂いたバイオリンは、あたしの師匠スタッディーノ巨匠があたしに預けてくれたもんだ。見たでしょ? 中にスタッディーノのサインが入ったメモがあったの」
「っ…!」
「あたし、楽器を大事にしない音楽家って大っ嫌い!! あんなことできるくらいならそんなもんやめちまえ!!」
「なっ…によ…! なによ! 大体おかしいじゃありません? 藤峰真裕は今十六なはず。ここの生徒であるはずがありませんわ!」
「向こうで学校卒業したんだよ悪いか! てかあんた黙っててよ。あたし今そっちのやつに話してんの!」
でしゃばりぃなお嬢様。
こいつも大っ嫌い。
お母さんのこと……あんな風に。
「確かにあたしは父様達のおかげでああしてバイオリンが出来てるんだろうけど。…それでも、“藤峰真裕”の名前にあたしは色んなもん背負ってるんだよ」
「真緒ちゃん…」
「先代が築いてきた藤峰家の全て、父様とお母さんが造ったうちの音楽。…あたし達は自分の名前にそれらを背負って生きてるんだよ!」
それを……。
「それをあんたらみたいなのが汚すなんて許さない!」

