「へぶっ」
「もうちょっと女の子らしい悲鳴をあげようか」
「…ぶつかった相手が悪いからだもん」
「いやどんな理屈やねん無茶苦茶かΣ」
びしいっと振り向き様に突っ込んでくれたしゅっちゃん。さすがだ。
中に入ると二つくらいのグループが、すでに楽器を持っていた。
「えと……その…」
いろんな意味で怖気づいてしまい、そばにいたりんりんにすがる。
「あららどうしたの? 怖い?」
「うん…」
だってみんなすごい怖い顔してやってるんだお!
楽しくやろうよ~…。
「そういえば真緒ちゃん…楽器は?」
「え…」
そうなのだ。
ホールで女の子が言ったのは結局ただの嫌味だったけど、中身は正しい。
この音楽の名門では、楽器を持参するのは当たり前だ。
「持ってない……ことはないよね?」
立て続けに蓮くんが聞いてくる。
だけど今は……今は、あたしの楽器は出せない。
…まちゃっかり持ってきてるわけだけど?
「ちょっとあのそのええっと……まおの言うこと聞かないの!」
「は?」
「へ?」
「な?」

