そんなこんなで今朝は少しばかり慌ただしかった。
「ほんじゃー次の時間はそれぞれの科に分かれてなー」
二時限目が終わり、ようやく専攻の授業。
うんと背伸びをして楽器を手にし、ふらつきながらかっくんのもとへ行った。
「おいおい…ふらふらしてんなよ」
「いや、これはただの立ちくらみっす」
「あっそ…」
楽器は…ストラディバリの方はもう使えないから、他に持ってないしガルネリを借りることにした。
こんなの使ったことないんだけどなぁ…。
とはいえ昔使ってたのは、あろうことかパリに置いてきちゃったし。
今度取りに行こうかな。
送ってっていったらなんか大変なことになりそうだから。
「それ、使えんの?」
「ううんたぶん無理」
「……」
まあそりゃできるだけ頑張るけど?
先生のだよ? あの先生が愛用してたすっごいやつだよ?
あたしなんかがそもそも触っていいのかって話だよ。
でも楽器がないからしないとか、そういうのは先生は望まないもん。
だからちょこーっと借りるの。
音楽は先生の遺志だからね。

