「顔とか…見なかったのか?」
「ううん…」
一瞬だったし、ナイフのほうに気を取られてたし…。
コートを深く着込んでいて全く分からなかった。
「とりあえず帰ろう。僕達はもう帰っていいってさ」
「うん…」
気遣われるのは申し訳なかったけど、そんな余裕はない。
バイオリンを胸に抱きしめて、かっくんに腰を抱かれながら歩いた。
「…………また忘れた」
「……」
マンションに着いたはいいけど、ショックのせい(にしてるだけ)でまたも開錠の数字を忘れてしまっていた。
「…てへ?」
「ハア…。よく見とけ」
ため息をついて、ゆっくり番号を押してくれた。
「うん。覚えた覚えた」
「本当だろうな…」
「うんうん」

