「んじゃ、今度こそいっきまーす」


そう言って構えた瞬間、表情ががらりと変わった。


「…!」


その顔は……俺が探し求めた、“藤峰真裕”のものだった。


…正直言って、圧倒された。

あの小さな体のどこからそんな音が出せるのか。

どれほどの感性を持っているのか。


俺では…絶対に敵わない。


心の底からそう思った。


とても真裕らしい音。

音楽を、バイオリンを愛しているのがよく伝わる。

楽しんで演奏しているのがよく伝わる。

俺やそこらの演奏者とはそこが違うのだろう。


こんな音は、到底出せない。



―ギィン



「……」

「……」

「……」

「……は?」


……いや…なんだ今のは。


「……えへ。間違えちった」


「……」