胸の裡側、痛んだその場所に薄墨のような膜が張る。


それはどんなに薄くても、黒い墨で。

気付きたくなどなかった黒く沈んだ感情が芽吹く。








「あかり」
「ま、まさ…巳く、ん……?」


すっぽりとオレの腕の中へと収まる細い体躯を壁際に追い詰めて。

ゆるり、と。

結われた栗色の髪を撫で、そのまま手のひらをなめらかな頬へと滑らす。



「ねえ、あかりは誰のモノ?」


「え、あ、……あの……柾巳く……っ!?」



うっすらと薄紅に色づいた口唇に指を這わせば、彼女は頬を赤く染めて。

その素直で可愛らしい反応に喜びが生まれる。

けれど君と彼を見たときに感じた薄墨のような黒く澱んだ感情が消えなくて。オレを唐突な行動へと突き動かした。