「あー、久しぶりに笑った。
ボール、サンキュ。」
あたしが磨いたばかりのボールを簡単に片手で掴む。
大きくて、血管が少し浮き出た大きい手にまたドキっとしてしまう。
そして想像してしまう。
あの手に触れられたら...
どれだけ幸せなんだろう。
「ボーっとしないで、頑張れよ。
俺も練習頑張るからさ。」
ぽんぽんと頭を撫でられる。
きゃあああ。撫でられてるよっ。
いつになく優しげな先輩に胸がぞうきんをしぼるときみたいにぎゅーっとしめつけられて、苦しい。
幸せな苦しみ。
あたしマネやめません、先輩!
「頑張りますっ。
大好きです、先輩。」
先輩を見上げて、にっこりと笑う。
こんなサラっと好きって言えるのは、ホントに好きだから。
伝えたくて、伝えたくて。
伝わってほしくて。
いつか...
あたしに応えてね、先輩。
「お前...反則だろっ...」
一瞬、苦しげな表情を見せたけど、
あたしの視界は先輩でいっぱいになった。
「......っ!...」

