「...うんっ。」
無意識に微笑む。
先輩が嬉しいことばっかり言うから、あたしの口角、吊り上がる一方だよ。
あ、先輩じゃない。
「...爽司。」
爽司は強引にあたしの手を掴み、歩き出す。
突然の行動に転びそうになりながらもついていく。
「どこ行くの...?」
あたしの質問に答えず、どんどん賑やかで人が集る場所から離れていく爽司。
そして、人通りの少ない路地でやっと止まった。
「そうっ......んんっ。」
否応なく重ねられた唇。
後頭部を持たれて、深さが増した。
冷たかった唇が一瞬にして、熱を持って...
息つく暇などない、激しく貪るようなキス。
酸素を求めて微かに開口した隙間から、生あたたかいモノがグッと割り込んでくる。
「...んんっ...っ...」
...苦しいっ。
キスを振りきれないあたしは、ほぼ反射的に力任せに眼前の胸板をバンバン叩いた。
ようやく離れた唇と唇を伝う、透明の糸。
それは先ほどまでのキスの激しさを物語っていた。
「...っ...」
酸素を求めて、何度も呼吸をするあたし。
こんなに激しいキスは初めてで。
もう立っていられずに、しゃがみこもうとするあたしの腕を掴む手。
「...あんまり欲情させんな。」

