あんな事があった数日後、俺は彼女の事をもっと知りたくなってまたあの場所に足を運んだ。

我ながらもの凄い事を考えた物だと思わず笑いたくなったが彼女を見るとそんな考えは無くなった。

今日はベンチに座って弁当を食べている。

もう少し早く来ればまた歌が聴けたのかな、惜しい。


「よっ。今日は歌わねーの?」


わざと明るい調子で話しかけてみる。その方がきっと絡みやすいからな。

「あ、…」

呼び掛けに気付いて顔を上げた彼女は俺を見て口ごもり、また俯く。

やべ、もしかして俺嫌われてる?

「あー…っと。俺、ずっと前から気になってて。入学式ん時からさ、真面目そうな人だなーって」

おい、何で余計な事を言う俺の口。

気になってる、とか変に誤解されたらとんでも無い結果になってしまう。

もしかしたら今度こそ本当に泣いてしまうかもしれない。

「……真面目、」

そうぽつりと呟く彼女は持った箸を口元で止めたまま地面を見つめている。

「いや、真面目っつーか…周りの奴らなんかケバいのばっかなのにさ。良い子なんだなって」

本当にそう思った。

今どきの若い人は皆明るい色の髪に派手な装飾、短いスカートに広く開けた胸元。

彼女は真逆なのだ。

真っ黒で真っ直ぐな髪、元々真っ黒なセーラー服は彼女の身長には合って居ないようで袖から出ているのは指先のみ。スカートも普通より長い。

そして彼女の顔にあるのは、黒い縁の眼鏡。

…真っ黒じゃねーか!

内心そんな突っ込みを入れながら俺は彼女に歩み寄る。