「なぁ」



授業中、
私の好きな人でもある尚が
私に話しかけた。





「……なによ」





ほんとは嬉しいのに
素っ気ない返事を返す私。




「教科書みして?
忘れちゃったんだよな」




そう言って
ふぅーと溜め息をついた。





「うん、いいよ」




私の机と尚の机とを
くっつけて
その真ん中に教科書を置いた。





「さんきゅ」






尚はそれだけ言うと
教科書に目を移した。





あの日から
全然、笑顔を見てない。





ほんとは、君の笑顔みたいよ





でも私には
君を笑顔にする力なんて
これっぽっちも
持ってないから……








ただ教科書を見ている間、
ほんの少しだけど
君の肩が当たる事に
何度も何度も
ドキドキしていた。