ペラペラと一枚一枚カードをめくっていく。

カラフルなクレパスやペンで彩られた文字や絵はまだ幼い子供たちの象徴だ。

そんな中に一枚だけ白色が目立つカードがあった。

白いカードにはピンク色のペンで“よかったね”と書いてある。

何が“よかったね”なのよ。


ユウは爆笑している。


「何回見ても、やっぱ笑えるわ。
 なぁ、これは何なの?」


「そのままじゃん。
 一つ年取れて、“よかったね” それだけよ。」


「なんじゃそりゃ。」




余白を塗り潰したかった。

親が嫌いで、周りに媚びを売っていた自分が今も昔も大嫌いだった。

その自分が残した跡なんか、全部消してしまいたい。

私に関わった人たちの中に存在している“香坂 愛”という記憶も全部。




「でも、オレはシンプルで好きだ よ。
 しかも、ピンク色だし。」


冷めきったミルクティーを飲んだ。

ミルクティーの表面が光を反射して、眩しい。


「本人はたぶん、何にも考えてな いと思うけどね。」


二人の笑い声が空虚な部屋に響き渡る。

物が少ないうえに部屋が広いから声が少し響く。




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