竹串にフランスパンを刺して、鍋の中に入れる。


フランスパンが私だったら、この竹串は男たち。


私は誰かに縋り付いてないと、落ちてしまう。


そして、ドロドロに溶けた欲望をたっぷり身に纏う。

私の姿が見えなくなってしまうまでたっぷりと。





「……い、愛、愛ってば!!」


レナの声に反応し、体がビクッとした。


「えっ……」


彼女の方を向いた瞬間……

「あっ……」


私が鍋の底へ沈んだ。


「付けすぎだって!!」


彼女は呆然とする私の肩を軽く叩いて、笑っていた。

“ほらほら”と私が持っていた竹串を手に取ると、欲望に埋もれた私をひょいと掬い上げてくれた。


「はい!」


彼女は優しい笑顔で私に竹串を差し出した。


「ありがと。」


慌てて私は竹串を受け取った。

竹串を持った私の手は少し震えている。



――私は助かったんだ





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