『これ、なんて言うんですかぁ?』
『サーモンのカルパッチョでございます。』
『おいしぃ〜♪千香様はお食べにならないの?』
『私はいりません。お気になさらず。』
…な、なにこれ?
ひとつのテーブルに一人黒い服の男の子がついてお客さんと楽しげに話してる
しかも、歳はあたし達と同じくらい
女の子はちらほらいるけど、接客してなくて食べ物運んでるだけ
それに皆スカートだ
あれ…
なんか、あたしのだけ服違うくない?
『さ、志穂ぉ!!あの6テーブル行ってオーダー取ってきて私に教えてぇ。私たちペアだからぁ♪』
ペア…?
あっちあっちと指さす沙織の顔を呆然と眺める
だいたいは分かってきたけど、ひとつわからないことがある
男と女の子がペアでひとつのテーブルを担当すること
男が主に接客を担当すること
でも…オーダーは男が行くんでしょ?
あたし女の子だから、違うんじゃ…
『はいッ!!ズラ被って。志穂はいまから男の子さぁ♪』
ニコニコ笑顔で沙織があたしに無理矢理短髪のズラを被せ、あたしの背中を力強く押す
あたしが迷ってアタフタしてるとスタッフルームから出てきた郁さんと目が合った
郁さんは言っちゃいけないことを言っちゃったみたいな顔で、苦笑い
…フンッ!!
郁さんにそっぽを向き6番テーブルに歩いていく
『…いらっしゃいませ。ご注文はお決まりですか?』
あまり顔を見られないよう視線はテーブルに移し、語尾だけ上目遣いで視線をお客さんに向ける
お客さんだった女の子2人の顔がみるみるうちにほころぶ
でも、あたしはすごく緊張しててそんな変化に気づかなかった



