『…っ…み、水城さんはっ…進たちとは、まだっ…仲良いですか?』
『奈梨でいいよ?…うーんと…いまは恭哉としゃべるだけ…』
また、悲しそうな顔をして無理に笑う
…っ
あたし、なんてこと聞いてんだろ…
こんなこと聞く必要ないのに
奈梨さんを傷つけた…。
自分が嫌になってくる
人を傷つけることしかできない自分が
謝らなくちゃ…
『あのっ…』
『私…逃げたの』
『へっ?』
逃げた…?
あたしの言葉を遮って奈梨さんが重そうに口をひらく
まるで言いたくないことを無理やり言ってるみたいに…
俯いて話す奈梨さんをただひたすら見つめるあたし
『私もね…恭哉のこと好きだから昔を知りたいって時期があったの』
やっぱり…好きだったんだ
胸の辺りがキュッと痛む
あたしはこの痛みを知ってる…。
切ないとき。嫉妬したときに痛む
…いま、あたしは奈梨さんが会長を好きだと知って
切なくなった。
『でも…けっこう重くて受け入れ切れなかった…馬鹿だよね…それでもがんばればよかったのに…逃げたんだもん』
声がだんだん小さくなっていく
あたしは心配になって奈梨さんの顔をのぞくと、
一粒の涙がこぼれた
奈梨さんっ…
奈梨さんは後悔してるんだ…。
逃げたことに
そのときにがんばればなにか変われたと…
あたしの目頭も熱くなっていく
これは奈梨さんがいまのあたしに似てるからかな…?
気持ちが分かるから
それとも同情?
…わかんないよ。



