何なのだ、この異常なまでに落ち着く空間は。

まるで、ここにいるのを許されているかのような感覚。


「森?

ここにライカがおるのか?」


風牙は周囲を見回す。


そこには、一本の樹を挟み、背中合わせに座るライカと…幸大。


「ライカ、お主、見た目と違い、なかなか良い演出をするではないか。」

「風牙!

何でここに?」

「幸大からの頼み、とでも言おうかのぅ。

しかし、ここは妙に落ち着く場所だな。

夢の中とはいえ、ここまでとは。」


「夢の中?」

「知らんのか?」

「いや、なんとなく、そんな気はしてた。

でも、僕は、夢の中でも良いかなって思う。」

「しかし、それでは、こちらも困る。

それに、幸大は現実の中におる。」


「わかってるよ。

でもさ…

現実で僕に振り向いてくれると思う?」

「それは私にもわからん。

それこそ、神のみぞ知る、といったところだ。」


「だったら、僕はこのままでも良いかな。」


「ライカ、それは本気か?」

「…うん。」

スパンッ、

風牙が幸大を斬る。

「何を!?」

「そんな弱い存在に頼らなければいけないほど、お主が弱かったとはな。


私の買いかぶりだったやも知れん。」