【BL】愛してるの過去形









竜哉と会わなくなって5年の月日が経った



僕は竜哉たちの結婚式の翌日、携帯を替えた。
そしてそれまで住んでいたアパートも引き払い、留学の準備が整うまでは大学に住み込

んだ。


卒業した後はすぐに留学先のイタリアへと渡った。




いつまでになるかわからなかった留学は5年で終わった。
いまは日本へ戻る準備をしている最中。

手の中にある1枚の写真をもう1度見てアルバムに綴じる。

日本に戻ったら、竜哉にあうかもしれない。
ここに残るという選択肢もあったけど、あえてそれは選ばなかった。


今でも竜哉の事は好きだ。
だけどもし、いま竜哉に…竜哉と梓さんにあっても心の底から祝福できる。



なぜなら



「晴紀―
こっちは準備できたよー」

「わかった
じゃぁこっち手伝って!」

「はーい」




僕にも恋人ができたから




隣の部屋から来た香澄。
彼女も僕と同じで留学生。

香澄は僕が竜哉を好きだと知って、僕の事を好きだと言ってくれた。
僕は最低な人間だ。竜哉を忘れるために香澄を利用した。
でも、優しくて天真爛漫な彼女に僕は惹かれていった。

だから、竜哉の事は今でも好きだけど、それは親友に対してのもの。
彼女には本当に感謝してるんだ。


「香澄、」

「ん?」

「好きたよ」

「うん」

「愛してる」










竜哉、

今まで本当にありがとう

君に出会えてよかった

君の親友になれてよかった

君を"愛せて"よかった

もう二度と会うことはないだろうけど

もしまた会えたら

その時は君に言うんだ

"愛してた"









END