オヤジはヒーロー

時計は2時になろうとしてる、作戦開始から2時間余り、俺は泥棒を確保する役なので玄関で待機している娘は西側の窓にカーテンの隙間から外を見張り妻が北と東側を台所の小窓から見張っている、
俺は靴を脱いだり履いたり柔軟体操したりと落ち着かない、「あなた、少し静かにして」と怒られる始末「おい、ちょっとトイレいってくる‥」「しょうがないわね！音立てないでよ！
その時は妻の掛け声で突然訪れた、
万全の準備をしていても時としてまるで役に立たない事がある事がある、走りやすいように運動靴、護身用のバットを用意していたが今の俺は裸足で手には何も持たずにベランダ側に走っている、
俺はベランダに着く最後の家の角を曲がった、
相手がいるとは頭の中では分かっていたが今目の前にそいつが立っている、さすがに俺はビックリした、
その男は黒っぽいジャージの上下を着て中肉中背髪は短めで俺とは違い軽快そうなランニングシューズを履いている、
「若い！」俺の第一印象だった、俺の頭の中は中年オヤジのイメージで出来上がっていたので意外な展開に少し混乱した、
お互いビックリした目で見つめ合う、何秒位だっただろう、やつの口元がかすかに動いた言葉は聞こえなかったが「なんだよ…｣と動きから察した、
やがて俺の姿を上から下まで見たやつは俺の足元を見て目が止まった、そうだ俺は裸足である、やつは裸足の俺を見て察したらしい、ちらりと俺の目を見た瞬間だった、後ろを向いて凄まじいダッシュで逃げ出したワンテンポ遅れて我に戻った俺も「ぐをらー待てー」と明らかに日本語では無い声を上げ走りだした。